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組合員間の取り決めで業務執行の一部を委任して組合員の業務執行権に制限を加えた場合であっても、取引の相手方はこれを知り得ないのが通常です。
そこで、第三者の信頼を保護するために、組合員の業務執行権について制限が存在する場合、これを善意の第三者に主張することはできないとされており、取引の安全が図られています(同3項)。
(4)業務執行者の権利義務LLPの業務執行を行う組合員は、自己の名でLLPのために契約の締結などの法律行為を行うことができます。
具体的には、「○○有限責任事業組合組合員A」の名で法律行為を行うことになります。
組合員が法人の場合は、「○○有限責任事業組合組合員A社職務執行者X」という名義を使うことになります。
また、業務執行を行う組合員には、民法の委任における受任者の権利義務の規定が準用されます(法56条、民法671条)。
LLPの業務執行については原則としてすべての組合員が業務執行権限を有するのですから、業務執行の一部をある組合員に委任した場合は、総組合員または組合が委任者に該当し、業務を執行する組合員が受任者に該当します。
具体的には以下のような義務があることになります。
業務執行を行う組合員は、「善良なる管理者の注意」をもって業務執行を行わなければなりません(民法644条)。
業務執行を行う組合員は、他の組合員から請求がある場合はいつでも、LLPの業務処理の状況を報告する義務があります。
また、業務執行が終了した場合は、その経過について遅滞なく報告しなければなりません(民法645条)。
ただし、業務執行者がこのような報告義務を怠っても、その者が第三者と行った行為の効力には影響を及ぼしません。
業務執行を行う組合員が業務を行うにあたり、金銭やその他の物を受領した場合は、これをLLPに引き渡さなければなりません(民法646条1項)。
引渡しまたは移転の請求権を有しているのは、他の組合員全員ですが、LLPがその組合財産の管理者を定めている場合には、この管理者に引き渡し、管理者が受領した金銭その他の物を組合財産に組み込む手続をとることになります。
業務執行を行う組合員が、LLPのために、組合員の名義で権利を取得した場合は、その権利を組合に移転する必要があります(同条2項)。
業務執行を行う組合員が、LLPに引き渡さなくてはならない金額、または組合の利益のために使わなければならない金額を組合員自身のために消費してしまった場合は、組合員は、そのような金額を消費した日以降の利息を支払わなければなりません。
消費してしまったことによりLLPに損害を与えた場合は、その損害を賠償する責任があります(民法647条)。
業務執行を行う組合員は、特にその旨の取り決めを行わない限り、LLPに対して報酬を請求することはできません(民法648条1項)。
LLPから組合員に対して報酬を支払う場合は、別途契約が必要になります。
もっとも、LLPの場合は、出資者である組合員全員が業務執行を行うのですから、あくまでも配当という形で利益の分配を受けるべきで、給与という形での分配は受けられないのが原則だと考えられます。
E組合員が業務執行を行うにあたり費用を必要とする場合、LLPに請求すれば、LLPは、必要となる費用を前払いしなければなりません(民法649条)。
また、業務執行を担当する組合員が、その業務執行に必要な費用を支出した場合は、LLPに対して、その費用に支出した日以降に発生した利息を加えた額の償還を請求することができます(同650条1項)。
もっとも、実際問題として、LLPにおいて各組合員が必要に応じてその都度費用の前払いを請求したり、予算に何の制約も受けずに支出した費用を事後的に全額請求したりという運用はあまり想定できません。
一般の企業体のように、あらかじめ各業務に予算を付けて、その業務を執行する組合員が与えられた裁量の範囲内で予算を使いながら業務を執行するというパターンが一般的になると考えられます。
F業務執行を担当する組合員が、業務執行にあたり、自己に過失がないのに損害を受けた場合は、LLPに対して賠償を請求することができます(同650条3項)。
たとえば、組合の業務を執行するために出張をして、その出張先で事故に遭い負傷した場合、出張したことや事故に遭遇したことについてその組合員に過失がなければ、組合員は、LLPに対して損害賠償を請求することができます。
事故の相手方に対して損害賠償請求できる場合でも、そのことによってLLPに対する損害賠償請求権を失うことにはなりません。
(5)LLPの業務の法的性質組合員がLLPの業務として行う行為は、商行為となります(法10条)。
このため、LLPの業務によって生じた債権には原則として5年間の短期消滅時効が適用され(商法522条)、また、その債権に関して遅延利息が発生する場合、別段の定めがなければ年6パーセントの商事法定利率が適用されます(同514条)。
(6)法人が組合員の場合会社(法人)がLLPの組合員となる場合、LLPの事業は、その会社の目的の範囲内に入っていることが必要です(民法43条)。
会社がLLPの組合員である場合は、組合員として職務を行う者(自然人)を選任して、他の組合員に通知する必要があります(法19条1項)。
具体的には、会社の中でLLPの事業を担当する事業部門の責任者が選任される場合が多いでしょう。
この職務執行者は登記事項です(法57条3号)。
LLPにおいては、組合員は、その出資の価額を限度として、組合の債務を弁済する責任を負います(法15条)。
これは、LLPの特徴の一つである有限責任を定めた規定です。
LLPの負債はLLPの財産からのみ支払われ、各組合員がそれ以上に返済義務を負担することはありません。
組合員は、事業が失敗に終われば出資金が全く戻ってこないというリスクを負っていますが、それ以上の責任は負わない、というのが、「出資者が出資額の限度までしか事業上の責任を負わない」という意味です。
有限責任は、LLPとしての借入金債務や、LLPとしての取引に基づいて負担する買掛金債務のように、LLPの通常の業務から負債を負った場合のみならず、組合員の不法行為による責任や、LLPの財産である建物から生じた工作物責任(民法717条)のように、LLPの業務に関して第三者に損害を与えた場合にも適用されます。
このような場合、組合員は、組合財産をもって発生した損害を賠償する責任を負うと規定されているからです(法17条)。
ただし、組合員が自己の職務を行うについて悪意または重大な過失があり、この結果第三者に損害を与えた場合、その組合員は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負わなければなりません(法18条1項)。
この責任は無限責任です。
また、他の組合員もその損害を賠償する責任を負う場合は、損害賠償義務を負う組合員らの連帯債務となります(同条2項)。
上記の規定はどのような場面で適用されるのでしょうか。
法17条および18条は民法の不法行為の規定を修正するものではありません。
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